・ ろこどる
前回登場した新キャラ、みらいちゃんがろこどるチームに馴染むお話でした。
今まで末っ子として可愛がられてた奈々子が、初めて人を引っ張る立場になる展開をコンパクトに纏めて描いており、良い仕上がり。
地味ーに長女たるゆい先輩の先輩力描写が濃厚であり、ゆかり先輩以外はみんな丁寧な描写されててグッドでした。
ゆかり先輩はアレだ、クソレズってれればキャラ立っちゃうのが強みであり弱みだよなぁ……なんだよ密室トークって……。

いい距離感でまとまった人間関係に新キャラがねじ込まれると、上手く馴染めず浮いたりするもんですが、その問題を一話使って解消しつつ、既存のキャラの描写も深める手際の良さは流石。
こういう仕事の巧さ、マジろこどる信用できる。
全然関係ないけど、今週はBaby Metalでしたねエンドカード。
元ネタ探すのも結構楽しいので、リアルアイドルトレースは最後まで続けて欲しいものです。

 

・ Free!
作画的にも箸休め回! と思わせておいて、真琴と遥の距離感描写を更に強化する、なかなか面白いバイト回でした。
Free! にしては珍しく止め絵を使ったりしてましたが、子供の「いまいち寸詰まりで起伏に欠ける身体」の描写は本気すぎで、やっぱ京アニは凄いなぁペドいなぁと思いました。
……KD(Kodomo Daisuki)多すぎだろ京アニ作画班。

今回の軸になるのは「遥という神様から離れ始める真琴と、それに戸惑う遥」という距離感でして、開幕バイトを遥に断りなく決めてしまう真琴からして、既に間合いがある。
それはやはり、県大会での決戦を経て、身勝手に自分の心にケリを付けてしまった真琴と、未だ道を見つけず何処にも行けずに居る遥との、立場の違いが生み出しているのでしょう。
今回の舞台が部活ではなくコーチの経営するプールであること、メインキャラクターが知らない子供であることはかなり示唆的であり、あの部室が象徴する『お互い顔見知りで、閉鎖的に人間関係が循環する場所』から真琴が一抜けしつつある事実を、分かりやすく示しているように思えます。

さらに言えば、タイムに支配されない児童教育としての水泳の中で"何か"を手に入れたのは、あくまで部活モノとしての勝負論に支配されたFree! の世界観から飛び出す、大きなものだったと思っています。
遥に勝てない、天才ではない、水泳の女神様に愛されていない凡人、橘真琴。
しかし彼は一人の少年に水泳の楽しさを教え、そのことには価値があると描写されている。
この横道は一見無価値にも思える寄り道ですが、水泳という事象の多面的な価値を描写するという意味では、とても重要な寄り道であり、そこに価値を見出すことで橘真琴を救済するという意味でも、大事な話なんじゃなかろうか。

真琴は遥に比べて社交性が高く、人や事象との距離感を取るのが巧い、いわば『大人っぽい』キャラクターだと言えます。
これは今回、"知らない子供(≒他者)"である楓斗とサシで話す場合必ず相手より下の目線に潜り込んでいること、"知ってる子供(≒身内)"である弟妹とは姿勢を変えずに話していることからも見て取れます。
このような、セリフに頼らずキャラのEQを描写できる細やかな演出がこのアニメらしいなと思うわけですが、相手に応じて対応を変え、他者や未知に対しても臆することなく必要な対応をとれる真琴だからこそ、笹部コーチのもとでバイトを行い、金銭を受け取り、社会的な貢献をして他者の中の自分を確立できているわけです。


そして、遥はそれが出来ない。
「俺はフリーしか泳がない」と言っていた独善が薄まったとはいえ、未だ他者との距離感に悩み、不器用にしか動けない彼の『子供っぽさ』が、今回真琴が見せた『大人っぽさ』と対比されることで、より目立っていました。
非常に親しかった真琴は勝手に大人になって、勝手に道を見つけて、勝手に離れてしまっている。
そこへの苛立ちと不安、そしてその事自体を"良いことだ"と認識している健全さと知性が、今回の遥からは見て取れました。

例え『大人っぽく』賢く立ち回れなくても、真琴の迷いを払って楓斗に背泳ぎをさせた(物語的な正解を示唆した)誠実さが遥の中にはあり、それこそが彼の魅力なのかな、などと思いました。
道(未知?)に戸惑うのは、困惑しつつも「どこかに行かなければならない」という一種の使命感(もしくは強迫観念)を背負っているからであり、それがあれば、恐らくどこかには辿り着くのだと思います。
たとえそれが最終的に「社会」に繋がっていなかったとしても、外側に目を向けることは無意味でも無価値でもなく、大事なことだとも。

ずーっと一緒に楽しい水場で遊んでいた真琴は、一足先に道を見定めて歩き始めてしまっています。
来週の予告を見るだに、ここ数話で描写されていた遥の孤独と当惑を掘り下げるようですね。
さて、今回遙の不器用な至誠が真琴を正解に導いたように、離れつつある親友は遥を受け止められるのか、それとも別の誰かが?
楽しみですね。

 

・ アイカツ!
こういう回があるから、アイカツは凄まじい。
そう言わざるをえない、16回ぶりのあかりちゃんメイン回でした。
アイカツは滅多に(と言うか一回も?)マイナスの状態のまま次回に引かず、話を継承するにしても一回一回課題をクリアしてから繋ぐわけですが、今回は明確な前後編。
スタイルを崩してでもやりたい事があるという、強い意志を感じました。

ドリアカという黒船の描写を終えて四月、クールの折り返しに出てきたあかりちゃんは、その陽性のキャラクター、"持っている"女の子ばかりが描写されていたアイカツの中でレアな"持っていない"凡人としての立場と、物語的発展要素を大量に内包したキャラクターでした。
既に自分自身の物語をほぼ終えているいちごちゃんが師匠となり、何も持っていないあかりちゃんを導く物語として二期後半に強い期待を僕は持っていたわけですが、結果としてWM中心の構成となり、あかりちゃんのお話は80話「アイカツ!ブートキャンプ」以来、メインのお話として出てくることはありませんでした。
しこうして、三期の情報が出てきて、キャラクターを一新すること、そして主人公があかりちゃんになることが判明し、色々と納得がいきました。
星宮いちごというあまりに完成度の高い主人公から、場を一新して空気を入れ替える時に不安なのは、橋渡しの失敗。
それを避けるべくアイカツという稀代のIPが仕掛けたのは、二期後半で既に三期主人公の顔見世と、前主人公に当たる星宮いちごとの掛け合いを済ましておく先取りの戦術でした。

これを可能にするのはアイカツというアニメーションの特色である『個別エピソードの圧倒的な切れ味』であり、初お目見えとなった76&77話、コメディタッチな個別エピソードである80話、全てしっかりと仕上がった面白いお話で、視聴者はたった三話であかりちゃんに好意を抱いたと思います。
しかし、二期後半でやるべきことは新主人公のお披露目以外にも山ほどあって、WM(特に初登場となるみくる)の印象付け、スターライトとドリアカのクロスパートナー展開、IPとしての継承を重ねあわせた"アイカツの未来"というテーマの掘り下げ、ゲーム連動企画であるアイカツ8などなど、沢山のタスクの中、あかりちゃんの出番はあまりありませんでした。
87話でおとめのマネージャーをしてたくらいでしょうか。


さて、このような状況が前景としてあって今回のお話ですが、基本的には九話「MOVE ON NOW!」の変奏曲となります。
一期の名エピソードを別のキャラクター、別の角度から再演するこの手法はアイカツ二期の特徴と言っていいのですが、天才・星宮いちごの才能と結びついた努力と勝利を描いた九話に対し、今回は徹底的に凡人・大空あかりの努力と挫折を描く回です。
ドラマに不必要なキャラクターを「夏休みだから」というエクスキューズの元、徹底的に画面から追放する念の入れよう、手際の良さに、思わず唸ってしまいました。

そのようにして画面に残ったのは、大空あかりとジョニー先生でした。
こと前編としての今回に限って言えば、いちごちゃんは最後の最後でジョニーにバトンを託される立場でしかなく、孤独に己の才能の限界に向き合うあかりちゃんに常時寄り添っていたのは、ジョニー別府という一人の教師、一人の大人でした。
この濃密な関係はバラエティ豊かで賑やかな物語構成が魅力のアイカツではかなり珍しく、そういう意味でも今回がかなり変則的な回だというのが見て取れます。

久しぶり(約四ヶ月!)に登場したあかりちゃんのストーリーをまとめたアバンから始まり、ルームメイトのユウちゃんが実家に帰省するところから、物語は始まります。
さっき「不要なキャラクターをパージする手際の良さ」と言いましたが、あかりちゃんと同じように(もしくはそれ以上に)見せ場のなかったユウちゃんのキャラを、一瞬で立て切る今回の見せ方の巧さは、ホントアイカツの強いところを圧縮して固めたような巧妙さでした。
わざわざ帰省する前に顔を見に来る距離感、ガランとして部屋にただいまと言ってしまって気づく流れ、ユウちゃんがいない朝を不機嫌に迎えるあかりちゃん≒ユウちゃんの不在を描くことでユウちゃんの存在感を描く手際を見て、本当にアイカツの個別回は巧すぎると再確認しました。
こういう風に、一秒を無駄にせず画面に喋らせてしまう手際があるからこそ、きゃrカウターへの強い愛着が生まれ、彼女たちのドラマに前のめりになるわけです。


さて、こうして孤独を手に入れたあかりちゃんは徹底的にトランポリンでジャンプし、徹底的に無様に失敗し続けます。
講習を一緒に受ける友達が先に抜けても、憧れの星宮いちごを見かけても、既にアイドルとしての心構えを手に入れているあかりちゃんは、この世界観らしく体を動かし続け、汗を流し続けます。
繰り返される失敗と再起、その裏側にあるあかりちゃんの愚直さは、才と非才の差はあれ、これまでアイカツで輝いてきた女の子たち全てが持っていたものであり、純真さこそアイカツというアニメにおいて最も重視される美徳である以上、視聴者(というか僕)はやはりあかりちゃんのことを、好きにならざるを得ない。

同時にこの話が前後編であり、二期と三期の橋渡しというメタ的な役割を背負わされている以上、あかりちゃんの努力はまだ実を結ばない。
彼女は失敗し、失敗し続け、「私の輝きってなんだろう」と悩むところで、今回のお話は続いているわけです。
アイカツ! というお話に信頼をおいている視聴者(つまり僕)は彼女の真摯な努力が、星宮いちごによって突破口を与えられ必ず報われることを知っているわけですが、ともあれ今回彼女は沈んだままなわけです。


では、今回の話に上がる部分はないのかと言われれば、それはもう一人の主役、ジョニー別府が担っているわけです。
キャラクターが増えた二期では極端に出番が減り、出たとしても一瞬一瞬を賑やかにするコメディリリーフ的な見せ場ばかりなジョニーですが、教師として、大人として、相当な人格者であることは今までも描写されてきました。
生徒の個性をしっかりと把握し、生徒個人に寄り添いともに汗を流し、子供のために時間を使うことを一切厭わない大人。
現在のおとぎ話としてのアイカツ! において、彼ほど妖精役を完璧にこなしているキャラクターは他にいないわけです。

あかりちゃんの孤独な努力が一つの軸となる今回、ジョニーはその努力を見守り、導き、助ける立場を完璧以上に達成してみせます。
アイドルという将来設計に必要なスキルを手に入れるべきタイミングで、必要なカリキュラムを用意する周到さ。
出来ていない部分はしっかりと指摘し、必要以上の肩入れをしない公平さ。

何よりスイカのシーンとセイラの実家での手厚いフォローを見れば、彼が生徒のためにやるべきことをすべてやる男だというのは判ります。
スイカのシーンではアイドル界におけるスペシャルアピールの重要性、今この時の大事さを積極的に伝え、教師という立場でできることをすべてやった上で、あかりちゃんの憧れであり彼女が"持っていない"全てを"持っている"天才・星宮いちごにフォローを頼む周到さ。
ジョニー別府という男がいるからこそ、あかりちゃんの苦しい孤闘も絶対に報われると信じて見ることができるし、アイカツ!という世界の厳しさと優しさが同時に担保されるわけです。
久々のジョニーの出番は、シリアスな出番の薄さをすべて吹き飛ばすような仕上がりで、本当に素晴らしかった。


そして、そのジョニーから問題解決のバトンを手渡されたのが、主人公・星宮いちごになるわけです。
今まで当然のものとして受け止められていた『アイドルの才能』に対し、"持ってない"アイドルであるあかりちゃんと真っ向から向き合うことで、いちごちゃんは答えを出さないといけません。
ジョニーが完璧な地均しをしてくれている上に、いちごちゃんもまた完璧な主人公ですので、収まるべき所に収まる……というか、こちらが想像している"収まるべき形"を上方向にぶち抜いた結果が出るでしょう。
アイカツはそういうアニメです。

既に次回のタイトル「」からして、一期から抜かずにタメ続けた伝家の宝刀"あおい姐さんの手紙"を効果的に使うつもりまんまんで、期待が高まりすぎてヤベェ。
あまりに大量の物語的テンションを溜め込んだあの手紙を、自分の問題ではなく、困っている後輩のために使うというのは、話の骨組みだけで盛り上がってしまう強度があります。
さて、次回後半。
とても楽しみですね。